そら子の徒然帳

思い付いたときに、思うままに、書き留めたいものを書きます。

ナイト~脱げなかった鎧の秘密 ロバート・フィッシャー著

「日常を言葉にする」「今感じたことを表現する」って、

いつからやらなくなったんだろう。

やらないのか、出来ないのか、難しいのか、
表現しなくても 溢れ出て来ずどうしようもなくなることが少なくなったのか。



先日、ずっと買おうか迷い保留にしていた『ナイト』を購入。

確か大学時代に読み、ずっと心の片隅に引っ掛かっていた一冊。

探していたけど、本屋さんじゃ中々会えなかったのだが、
ふと Amazonで検索したらすんなり出会えた。
便利な世の中になったもんだ。


そんなこんなで、何年ぶりかに「ナイト」を読んだ。


『Have you mistaken need for love?
「必要」と「愛」を、勘違いしていないか?』(107頁)

その言葉を、初めて読んだときから考えていたのかもしれない。

***

一国の騎士であるナイトは、国のために、困っている人々のために
鎧を見に纏い闘う。
そんな自分が、きっと彼は好きなのだ。

彼の妻と息子は、いつの間にかナイトの素顔さえ忘れ
肖像画を見て思い出している。

ある日、ナイトは妻に『あなたは私を愛していない、救うことが好きだったのだ』と言われてしまい
鎧を脱ぐことを試みる。

しかし、なにをやっても鎧はびくともしない。

引っ張っても、叩いてもなにをしても脱げない鎧。

危機感を覚え、ナイトは頼みの綱である魔術師に会いに、森を探すことになる。

なぜ鎧は脱げないのか。
このままではダメだとわかっているが、どうしたらいいのか。

ナイトが悩みながら、苦しみながら、
リスや鳥や魔術師と共に、
鎧を脱ぐための、そして自分を見つめるための物語。

***

『Have you mistaken need for love?
「必要」と「愛」を、勘違いしていないか?』


さて、
初めて読んだ時から引っ掛かっていたこの一文。

この物語の一つの核ではないかと私は思う。


以前は、「頼る」と「甘える」の違いもわからなかった。

「頼る」のは出来ないことを他人にお願いすること
「甘える」のは出来ることを他人にお願いすることだと

のろのろと、宛てもなく自信もなく低空飛行を続けていたときに
お母さんみたいな先輩が教えてくれた。

今ならわかる気がする。


自分のために他人を必要とするーー

というのは

自信がないことを隠そうと、必死になりながら
取り繕って不安から逃れようと

自分のことだけに目を向けているだけだと
なにも変わらない、
大切にしていたはずのものも失ってしまうこと。


ただ、それを知った今は
なんてことはない。

「知る」ことが大切。
そんな自分を、「受け入れること」が大切。


今ある自分の気持ちに、自分の身体の声に、
なるべく耳を傾けよう。

時間の流れや、多くの情報、いろんな感情に惑わされぬよう
ゆったり、ずっしりと
なるべくその日の私をその日のうちに
きちんと受け止めてあげる時間を作ろう。

そんなふうに、改めて感じた作品。



【書籍情報】
「ナイト 脱げなかった鎧の秘密」
ロバート・フィッシャー 著
松浦 健一 訳
2002年 アスペクト