『七緒のために』島本理生 著
初めての本の紹介は、島本理生さんの『七緒のために』について書かせて頂きます。
【書籍情報】
【読了後の感想など】
この本を知ったきっかけは、 『私が食べた本』村田沙耶香 著 を読んだこと。
島本さんの作品を読んだのは、この本が初めてなのですが
じわり、じわりと忍び寄ってくる、懐かしさ。
これは、なんなのだろうか ととても不思議でした。
高校生という、大人でも子どもでもない、ちょっと大人びた女の子たちに対し、
「扱いづらい綿菓子」(12頁)
と いうのです。
ふわふわしていて、あまったるくて、すぐ溶ける。
儚いけどちょっと危なっかしい。
女の子同士の集まりは、ただただ甘いだけではないのでしょう。
読んでいるうちに、思春期の頃の揺らぎや、息苦しさを思い出しました。
その時、その瞬間でしか感じられない感情が きっと思春期にはたくさんあったはず。
大人たちに救いを求めようにも、どうやって手を伸ばしたらいいかわからない。
そんな気持ちを抱えながら、お互い傷つけ傷つけられ、救おうともがく主人公雪子と、七緒。
この物語の中では、二人の周りには何人もの大人が関わります。
いつだって、大人たちは子どもたちを助けてあげたいと思っている。そう感じられました。
しかし、思春期というのは、なぜああも悩み、苦しみ、どうしようもなく儚いのか。
「嬉しいとか、悲しいとか言ったら、それだけで、いい」(132頁)
とあるように、多くのことは、それに尽きるのだと思います。
彼女たちが、どうなっていくのか。
ふたりの少女の物語を、ぜひこの本の中で見守ってほしいと思います。
【おすすめの方】
・ゴールの見えない靄のなかにいる、10代の若者へ
・ねっとりとした少年・少女時代を過ごした大人たち
そんな方たちへ。ぜひ、読んでみてください。